猛暑が続く時期になると、エアコンをつけっぱなしにした月の電気代に驚いた経験のある方も多いのではないでしょうか。家づくりを検討するなかで「高気密高断熱にすれば電気代が下がる」という話を聞き、実際どのくらい変わるのかが気になっている方に向けて、電気代のどの部分に影響するのか、そして夏と冬で効果の表れ方がどう違うのかを解説します。
なお、高気密・高断熱住宅そのものの定義やUA値・C値の意味については以下のページで詳しくご紹介していますので、あわせて確認してください。
まず押さえておきたいのは、住宅の断熱性能が影響するのは電気代のすべてではなく、冷暖房にかかる費用が中心だという点です。
資源エネルギー庁「エネルギー白書2022」によると、2020年度の家庭用エネルギー消費の用途別シェアは、動力・照明他が34.0%、給湯が27.8%、暖房が25.1%、ちゅう房が10.7%、冷房が2.4%となっています。つまり暖房と冷房を合わせた冷暖房は全体の約3割にあたります。
断熱性能を高めることで直接的に減らせる可能性があるのは、基本的にこの約3割の部分です。冷蔵庫やテレビ、照明などの電気代は住宅性能では変わらないため、「高気密高断熱にすれば電気代が半額になる」といった説明があれば、その根拠を確認したほうがよいでしょう。
※参照元:資源エネルギー庁「エネルギー白書2022」第2部第1章第2節 部門別エネルギー消費の動向
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/html/2-1-2.html(2026年8月調査時点)
ここで注目したいのが、暖房25.1%に対して冷房が2.4%と、そもそもの消費量に10倍前後の開きがあることです。埼玉のように冬にしっかり冷え込む地域では、断熱性能の差が金額として表れやすいのは冬の暖房費だと考えられます。
一方、夏はもともと冷房の消費量が小さいため、金額としての削減幅は冬ほど大きくなりにくい傾向があります。ただし夏に意味がないわけではなく、同じ冷房の使い方でも室温が安定しやすく、部屋ごとの温度差が生じにくくなるといった快適性の面で違いが表れます。
「夏も冬も電気代が大きく下がる」と期待するよりも、冬は電気代、夏は室温の安定しやすさという形で違いを感じやすいと理解しておくと、住んでからのギャップが小さくなります。
「夏は涼しく冬は暖かい家」といわれる状態は、断熱材を厚くするだけで実現できるものではありません。次の3つが揃うことで、はじめて近づいていきます。
断熱は、壁・屋根・床・窓を通じた熱の移動を抑える役割を持ちます。冬に室内の熱が外へ逃げるのを抑え、夏は外の熱が室内へ侵入するのを抑えるという、どちらの方向にも働くのが特徴です。同じ断熱性能が夏と冬の両方に効くため、「冬向けの家」「夏向けの家」と分かれるものではありません。
断熱性能はUA値(外皮平均熱貫流率)という数値で表され、小さいほど熱が逃げにくい住宅であることを意味します。
どれだけ断熱材を入れても、隙間から空気が出入りしていては効果が損なわれます。気密性能はC値(相当隙間面積)で表され、断熱性能を実際の体感につなげるための土台にあたります。
気密性が低い住宅では、冷やした空気や暖めた空気が隙間から逃げ、その分だけ余計に冷暖房を稼働させることになります。断熱と気密がセットで語られるのはこのためです。
なお、気密性を高めた住宅では計画的な換気が不可欠になります。換気方式による違いは高気密高断熱住宅と第一種換気システムの関係で解説しています。給気と排気の間で熱をやり取りする熱交換タイプであれば、換気による熱のロスを抑えながら空気を入れ替えられるため、冷暖房効率の面でも影響します。
夏の室温上昇の主な原因は、窓から入る日射熱です。断熱性能が高い住宅は、いったん室内に入った熱も逃がしにくいという性質があるため、日射を遮る設計がないと、かえって熱がこもりやすくなる場合があります。
反対に冬は、日射熱を室内に取り込むことで暖房負荷を下げられます。夏は遮り、冬は取り込むという相反する条件を、軒の出や庇、窓の配置・種類で調整するのが日射コントロールです。夏の暑さ対策の具体的な手法についてはパッシブハウスの暑さ対策もあわせてご覧ください。
必要な断熱性能は、建てる地域の気候によって基準が変わります。国は全国を1〜8の地域区分に分け、区分ごとにUA値の基準値を定めています。
埼玉県の場合、さいたま市・川越市・川口市・越谷市・熊谷市など県内の大部分は6地域に該当します。秩父市(旧秩父市・旧吉田町・旧荒川村)、飯能市、日高市、毛呂山町、越生町、小川町、寄居町などの県西部・県北西部の一部は5地域、秩父市(旧大滝村)のみ4地域とされています。
山沿いの地域ほど求められる基準は厳しくなるため、同じ埼玉県内でも、建築地によって目指すべき数値が変わる点に注意してください。
※参照元:国土交通省「建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令における算出方法等を定める件(国土交通省告示第265号)(抄)地域区分新旧表」
https://www.mlit.go.jp/common/001500182.pdf(2026年8月調査時点)
| 断熱等性能等級 | UA値(6地域) | 位置づけ |
|---|---|---|
| 等級4 | 0.87以下 | 2025年4月から適合が義務化された最低基準 |
| 等級5 | 0.60以下 | ZEH水準。国が2030年度以降の新築で確保を目指すとしている水準 |
| 等級6 | 0.46以下 | 冷暖房負荷のさらなる削減が期待される水準 |
| 等級7 | 0.26以下 | 現行制度上の最高等級 |
※参照元:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度|ラベル項目の解説(断熱性能)」
https://www.mlit.go.jp/shoene-label/insulation.html(2026年8月調査時点)
2025年4月以降に着工する新築住宅は等級4への適合が義務化されていますが、等級4はあくまで現行の最低ラインであり、冷暖房費の削減を重視するなら等級5以上が一つの目安になります。
断熱性能について調べていると「2030年には等級5が最低基準になる」という説明を見かけることがありますが、これは決定済みの義務化スケジュールではなく、国が掲げている政策目標です。
2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度以降に新築される住宅について、ZEH基準の水準(断熱等級5相当)の省エネルギー性能の確保を目指すとする政策目標が設定されました。この方針は、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画でも引き継がれています。
あくまで「目指す」とされている目標であり、等級5の適合義務化が法令として決まっているわけではありません。ただし国が段階的な基準引き上げの方針を示していること自体は事実であるため、数十年住み続ける住まいとして、将来の基準水準を見据えて検討する材料にはなります。最終的にどの等級を選ぶかは、予算やほかの優先事項とあわせて判断してください。
※参照元:資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について」(第6次エネルギー基本計画・2021年10月閣議決定の政策目標について記載)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/index03.html(2026年8月調査時点)
高断熱をうたう住宅でも、住んでみると期待したほど電気代が下がらないことがあります。主な原因として次のようなものが挙げられます。
電気代は住んでみないと分からないと思われがちですが、設計段階でシミュレーション上の目安を確認する方法があります。
2024年4月から、建築物の省エネ性能表示制度が始まりました。省エネ性能ラベルには断熱性能や一次エネルギー消費量に加えて、任意項目として「目安光熱費」(住宅の省エネ性能をもとに試算した年間光熱費の目安)を表示できます。
ただし、この表示が努力義務となるのは分譲住宅や賃貸住宅などで、注文住宅は制度上の対象外です。とはいえ、国が用意する省エネ性能ラベル等の作成プログラムを使えば注文住宅でも算出できるため、依頼先の候補となる工務店に「うちの仕様で目安光熱費を出してほしい」と依頼すること自体は可能です。
注意したいのは、この数字はあくまで計算上のシミュレーション結果であり、実際に請求される金額を示すものではないという点です。目安光熱費は全国統一の燃料単価と標準的な使用条件をもとに算出されるため、実際の光熱費は世帯人数・在宅時間・冷暖房の使い方・契約する電力プラン・燃料価格の変動によって大きく変わります。
それでも、同じ条件・同じ計算方法で算出された参考値であれば、複数社の仕様を横並びで比べる材料にはなります。金額そのものの正確さを期待するのではなく、あくまで会社ごとの性能差を比較するための指標として活用するのが現実的です。
※参照元:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」
https://www.mlit.go.jp/shoene-label/(2026年8月調査時点)
電気代の観点から住宅会社を比較するなら、次の3点を同じ質問で各社に投げかけてみてください。
回答が具体的な数字で返ってくるかどうかは、その会社が性能を数値で管理しているかどうかの判断材料になります。数値を明示できる会社であれば、住んだあとの光熱費についても前提条件を踏まえた現実的な見通しを持って比較検討できるでしょう。
高気密高断熱住宅で削減が期待できるのは、家庭のエネルギー消費のうち約3割を占める冷暖房費が中心です。暖房25.1%に対し冷房2.4%という内訳から、冬は電気代、夏は室温の安定しやすさという形で違いが表れやすいという点も押さえておきたいポイントです。
そして「夏は涼しく冬は暖かい家」といわれる状態は、断熱・気密・日射コントロールの3つが揃うことで近づいていきます。埼玉県は大部分が6地域にあたるため、これから建てるなら断熱等級5(UA値0.60以下)以上を一つの目安に、実際の計算値と実測値を示せる会社を選ぶことが、電気代と快適性の両立に近づくための現実的な進め方といえます。
省エネ住宅よりも性能の高い住宅(ZEH)が建てられる「ZEHビルダー」のうち、6つ星(最高評価)の埼玉県の住宅会社を3社ご紹介します。また、地震大国の日本において、安全に住み続けるための「耐震性」も注目したいポイント。そこで、耐震等級も最高ランク(耐震等級3)の会社を選出しました。新しい家での快適な暮らしを求めるご家族は、ぜひ注目してみてください。



【特集】
「省エネ住宅×
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画像引用元:岡田工務店公式サイト(https://g-labo-house.com/works/2023/04/new-31.html)
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